医師 百澤明ブログ
投稿日: お知らせ
《涙袋の加齢変化》 前回、裏ハムラ術後10年の患者さんの経過写真を投稿した際に、涙袋の変化についてが話題になっていたと聞きました。
今回は、涙袋の加齢変化についてを検討すべく少し調べてみましたのでこのお話をします。眼瞼の解剖といえば、鶴切一三先生と岩波正陽先生が非常に有名ですので、このお二人の偉大な論文をじっくり読み返してみました。難しすぎて詳しくは説明できませんが、下眼瞼の加齢変化についてざっくり列挙すると以下のようになります。
・皮膚支帯は、若いときは密であるが、加齢とともに脆弱化する。
・CPFは弛緩する。
・pretarsal部の眼輪筋のきれいなS字配列は乱れて集積する。
・preseptal部の眼輪筋は、若い頃は最も筋束が太いが加齢とともに筋束は菲薄化し眼窩脂肪の突出を受ける。
とこんな感じで何のことか分かりませんね。 鶴切先生は、2005年発表の論文中でいわゆる涙袋は「人相学的には”涙堂”といわれる、10-30代の若い人に見られる下眼瞼縁の膨らみ」と表現されています。ということは、若い人の特徴ですから、年を取ると消えてくるのではないでしょうか?
また、涙袋の形成には、眼輪筋のpretarsal portionとpreseptal portionが関与しており、涙袋は、実はこれ自体がふくらんでいるのではなく、その下部が凹んでいるので涙袋がふくらんでいるように見えるだけ、と指摘しています(マジか!!)。 ということは、眼輪筋を折り重ねたり、ヒアルロン酸を注入することで涙袋を形成する治療は、上部を膨らましているわけですから、生理的ではないことになりますね。
凹むことで上部を涙袋として認知させているのは、preseptal portionの眼輪筋の下部ですが、この部分は前述の通り加齢とともに眼輪筋は菲薄化して緩んできますので、やはり、加齢にともなって涙袋は消失していくということになります。
以上が、鶴切先生と岩波先生の論文を元にした涙袋の加齢変化に関する解釈です。 私も皆さん同様「下が凹んでいるからふくらんで見える」って「ほんまかいな!」と思いましたが、下眼瞼にBTXを打つと涙袋は消失しますので、眼輪筋の緊張が涙袋の形成に関与していることは間違いないと思います。